図解でわかる危険物取扱者講座

熱化学 - 化学反応における熱の出入り

発熱反応と吸熱反応

化学反応には、反応熱が伴います。反応熱(はんのうねつ)とは、反応する物質1molあたりに発生または吸収する熱量のことです。

が発生する化学反応を発熱反応(はつねつはんのう)、が吸収される化学反応を吸熱反応(きゅうねつはんのう)といいます。

危険物の化学反応によって生じる反応熱が、点火源となって火災や爆発が起こる場合があります。

スポンサーリンク

熱化学方程式

熱化学方程式(ねつかがくほうていしき)とは、発熱または吸熱する反応熱を記載した化学反応式のことです。

通常の化学反応式では矢印(→)を用いますが、熱化学方程式では等号(=)を用います。

化学方程式では矢印、熱化学方程式では等号を使います。

発熱反応のとき

発生する熱量をプラス(+)で記載します。

発熱反応ではプラス(+)

例えば、炭素が完全燃焼して二酸化炭素が生成するときの熱化学方程式は、次の様になります。

C + O2 = CO2 + 394.3kJ

394.3kJというのは炭素が酸素と結びついて二酸化炭素になった時に放出される熱量を表します。

吸熱反応のとき

吸収する熱量をマイナス(-)で記載します。

吸熱反応ではマイナス(-)

例えば、窒素が酸素と結合し一酸化炭素が生成するときの熱化学方程式は、次のようになります。

N2 + O2 = 2NO - 181kJ

-181kJは、上記の吸熱反応で吸収される熱量を示しています。

スポンサーリンク

反応熱の種類

反応熱には次の様な種類があります。単位は全てkJ/mol(キロジュール毎モル)となります。

燃焼熱

燃焼熱(ねんしょうねつ)とは、物質1molが酸素と反応し、完全燃焼するときに発生する熱量のことです。

燃焼熱

例えば、水素が酸素と反応し、完全燃焼して水が生成する反応は、熱化学方程式で次の様に書くことができます。

H2(気) + \(\frac{1}{2}\)O2(気) = H2O(気) + 286.2kJ

生成熱

生成熱(せいせいねつ)とは、化合物1molが成分元素の単体から生成するときに発生または吸収する熱量のことです。

生成熱

例えば、アンモニアが、窒素と水素から生成するときの熱化学方程式は次の様になります。

\(\frac{1}{2}\)N2 + \(\frac{3}{2}\)H2 = NH3 + 51.1kJ

分解熱

分解熱(ぶんかいねつ)は、化合物1molが成分元素の単体に分解するときに発生または吸収する熱量のことです。生成熱と分解熱の値は数値は同じで+-の符号は逆になります。

分解熱

中和熱

中和熱(ちゅうわねつ)とは、酸と塩基中和反応によって水1molが生成するときに発生する熱量のことです。

中和熱

例えば、塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応における熱化学方程式は、次の様になります。

HCl aq + NaOH aq = NaCl aq + H2O(液) + 56.6kJ

溶解熱

溶解熱(ようかいねつ)とは、物質1molを多量の溶媒中に溶解したときに発生または吸収する熱量のことです。

溶解熱

例えば、水酸化ナトリウムを溶かして水酸化ナトリウム水溶液をつくるときの熱化学方程式は、次の様になります。

NaOH(固) + aq = NaOH aq + 44.5kJ

ヘスの法則(総熱量不変の法則)

ヘスの法則とは、反応熱は、反応物と生成物の種類に依存し、反応経路には依存しないという法則のことです。総熱量不変の法則(そうねつりょうふへんのほうそく)とも言います。

例として、炭素が一酸化炭素を経て、二酸化炭素になる反応と直接、二酸化炭素になる反応を比べてみましょう。

まずは、炭素から一酸化炭素そして二酸化炭素になる反応。

C(固) + \(\frac{1}{2}\)O2 = CO + 111kJ …①

CO + \(\frac{1}{2}\)O2 = CO2 + 283kJ …②

そして、炭素から直接、二酸化炭素になる反応

CO + O2 = CO2 + 394kJ …③

①と②の生成熱の和と③の生成熱が等しいことがわかりますね。

スポンサーリンク