消火剤の種類
消火剤は、水、強化液、泡、ガス、粉末の5つに分けられます。
それぞれ、どんな消火作用があるのか、どんな火災に適応できるのか確認していきましょう。
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水
水消火剤は、比熱と蒸発熱が大きいため、高い冷却効果が期待できます。
普通火災(A火災)に使用することができます。しかし、油火災(B火災)には、燃えている油が水に浮き、炎を拡大させてしまう危険があるので適しません。(参考:比重と第4類危険物)
また、電気火災(C火災)の場合は、感電の危険性があるため棒状放射は適しませんが、霧状放射にすれば適応できます。
なお、水に触れると、発火したり可燃性ガスや有毒ガスを発生させる物質には使用することができません。例えば、次の様な物質が挙げられます。
- 無機過酸化物(発熱・爆発)
- 硫化りん(可燃性かつ有毒なガス発生)
- 鉄粉(発火)
- 金属粉(発火)
- マグネシウム(発火)
- 黄りん以外の第3類危険物(発火もしくは可燃性ガス発生)
- アジ化ナトリウム(自然発火性・禁水性の金属ナトリウムの生成)
- ハロゲン間化合物(有毒ガス発生)
強化液
強化液消火剤は、炭酸カリウム水溶液で冷却効果があります。
霧状放射にすることで、炭酸カリウムの抑制効果が働くため、普通火災(A火災)だけでなく油火災(B火災)にも適応できます。もちろん、水消火剤と同様、霧状ならば電気火災(C火災)にも対応します。
泡
泡消火剤は、冷却効果と燃焼物を覆うことによって生じる窒息効果によって消火します。
電気火災(C火災)には、泡に電気が伝わって感電する危険性があるため、使用できません。
泡消火剤には、さまざまな種類があります。
化学泡
炭酸水素ナトリウム(A剤)と硫酸アルミニウム(B剤)の反応によって生じた二酸化炭素を含んだ泡のことです。
機械泡
水に安定化剤を溶かして、空気と混合してつくった泡のことです。
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ガス
ガスは、泡消火剤と同様に燃焼物を覆うことによって生じる窒息効果によって消火します。
また、ハロゲン化物消火剤には、抑制効果もあります。油火災(B火災)と電気火災(C火災)に対応できます。
ガス消火剤には、次のようなものがあります。
二酸化炭素
不燃性物質である炭酸ガス(二酸化炭素)で酸素濃度を低下させるため窒息効果があります。電気の不良導体なので、電気火災にも適応できます。
ただし、人が多量に吸い込むと窒息の危険性がありますので、地下街などの密室に近い場所では使用できません。
なお、液化された二酸化炭素が使用されているため、気化熱による冷却効果もあります。
ハロゲン化物
ハロン2402、ハロン1211、ハロン1301を用います。窒息効果と抑制効果(負触媒効果)があります。電気の不良導体なので電気火災にも適応できます。
ただし、ハロゲン化物に触れると、自然発火する物質や有毒ガスを発生させる物質、反応する物質には適用できません。例えば、次の様な物質が挙げられます。
- 黄りん(有毒ガス発生)
- アルミニウム粉(自然発火)
- 亜鉛粉(自然発火)
- カリウム(激しく反応)
- ナトリウム(激しく反応)
- アルキルアルミニウム(有毒ガス発生)
- リチウム(激しく反応)
- バリウム(反応)
- ジエチル亜鉛(有毒ガス発生)
粉末
粉末消火剤は、薬剤の窒息効果と抑制効果によって消火します。
炭酸水素塩等
炭酸水素ナトリウムを主成分としたもの(Na)、炭酸水素カリウムを主成分としたもの(K)、炭酸水素カリウムと尿素を主成分としたもの(KU)があります。
消火作用としては、窒息効果と抑制効果があります。
この薬剤を用いた消火器は、油火災(B火災)、電気火災(C火災)に対応できるため、「BC消火器」といいます。
リン酸塩類等
主成分は、リン酸アンモニウム。窒息効果と抑制効果があります。薬剤が電気の不良導体なので電気火災にも対応します。
この薬剤を用いた消火器は、普通火災(A火災)、油火災(B火災)、電気火災(C火災)の全てに対応できるため、「ABC消火器」といいます。
まとめ
以上をまとめると次の様になります。
消火剤 | 消火方法 | 対応できる火災 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
冷却 | 窒息 | 抑制 | 普通 | 油 | 電気 | |||
水・泡系 | 水 | 棒状 | ○ | - | - | ○ | - | - |
霧状 | ○ | - | - | ○ | - | ○ | ||
強化液 | 棒状 | ○ | - | - | ○ | - | - | |
霧状 | ○ | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
泡 | ○ | ○ | - | ○ | ○ | - | ||
ガス系 | 二酸化炭素 | ○ | ○ | - | - | ○ | ○ | |
ハロゲン化物 | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ | ||
粉末系 | 炭酸水素塩類 | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ | |
りん酸塩類 | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
やや複雑な表なので覚え方についても記しておきます。
消火方法の覚え方
- 冷却消火…「水・泡系」 、「二酸化炭素」
- 窒息消火…「泡」、「ガス系」、「粉末系」
- 抑制消火…「霧状の強化液」、「ハロゲン化物」、「粉末系」
対応できる火災の覚え方
対応"できない"消火剤をまず覚え、それ以外を対応できるとして覚えたほうが覚えやすいでしょう。
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