動植物油類
動植物油類(どうしょくぶつ ゆるい)とは、動物や植物から抽出した油で、1気圧において引火点が250℃未満のものを指します。
ちなみに250℃以上の物品は、指定可燃物として市町村の条例で規制されます。
動植物油類の危険性は、自然発火性を持つという点です。
天ぷら油を新聞紙に染み込ませ放置しておき、火事になったというニュースを聞くことがあるかと思いますが、これも自然発火によるものです。
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自然発火性を理解するには、よう素価(ようそ か)の概念が重要になります。まずは、ここから確認していきましょう。
よう素価
よう素価(ようそ か)とは、自然発火のしやすさを表す概念です。油脂100gが吸収する よう素(I2)のグラム数で表します。よう素価が高いほど、自然発火しやすいことを表しています。
また、固化(こか)のしやすさを表す概念でもあります。
不飽和脂肪酸(ふほうわ しぼうさん)を多く含むほど、よう素を吸収する量が増えるため、よう素価が高くなります。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸(ふほうわ しぼうさん)とは、不飽和結合(二重結合または三重結合)を含む脂肪酸のことです。
動植物油類には、二重結合を含む物品が多く、空気中で酸化され、蓄積した酸化熱によって、自然発火しやすいという危険な性質を持っています。
固化
固化(こか)とは、油が空気中の酸素と結びついて固まる性質のことを表します。
よう素価が高いほど、すなわち不飽和脂肪酸が多いほど固化しやすい性質を持ちます。
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乾性油
乾性油(かんせい ゆ)とは、よう素価130以上の固化により完全に固まる油のことです。
主な物品は、次の通りです。
エノ油
エノ油(荏油、エノゆ)とは、エゴマの種子から得られる乾性油のことです。エゴマ油、シソ油ともいいます。よう素価は192~208。
アマニ油
アマニ油(亜麻仁油、アマニゆ、アマニあぶら)とは、亜麻の種子から得られる乾性油のことです。よう素価は190~204。
イワシ油
イワシ油(鰯油、イワシゆ)とは、イワシから得られる乾性油のことです。よう素価は154~197。
キリ油
キリ油(桐油、きりゆ)とは、アブラギリの種子から得られる乾性油のことです。よう素価は149~176。
ヒマワリ油
ヒマワリ油(ヒマワリゆ、ヒマワリあぶら)とは、ヒマワリの種子から得られる乾性油のことです。サンフラワー油ともいいます。よう素価は125~136。
半乾性油
半乾性油(はんかんせい ゆ)とは、よう素価100~130の固化により流動性が低下する油のことです。
主な物品は、次の通りです。
大豆油
大豆油(だいずゆ)とは、大豆の種子から得られる半乾性油のことです。よう素価は120~142。
ニシン油
ニシン油(ニシンゆ)とは、ニシンから得られる半乾性油のことです。よう素価は108~155。
綿実油
綿実油(めんじつゆ)とは、ワタの種子から得られる半乾性油のことです。よう素価は100~120。
ゴマ油
ゴマ油(胡麻油、ゴマゆ、ゴマあぶら)とは、ゴマの種子から得られる半乾性油のことです。よう素価は103~118。
米ぬか油
米ぬか油(米糠油、こめぬかゆ、こめぬかあぶら)とは、米ぬかから得られる半乾性油のことです。こめ油(米油、こめゆ、こめあぶら)ともいいます。よう素価は99~108。
ナタネ油
ナタネ油(菜種油、ナタネゆ、ナタネあぶら)とは、セイヨウアブラナの種子から得られる半乾性油のことです。よう素価は95~106。
不乾性油
不乾性油(ふかんせい ゆ)とは、よう素価100以下の固化しにくい油のことです。
主な物品は、次の通りです。
ヒマシ油
ヒマシ油(蓖麻子油、ヒマシゆ、ヒマシあぶら)とは、トウゴマの種子から得られる不乾性油のことです。よう素価は80~90。
落花生油
落花生油(らっかせいゆ)とは、落花生(ピーナッツ)の種子から得られる不乾性油のことです。ピーナッツ油、ピーナッツオイルともいいます。よう素価は75~90。
オリーブ油
オリーブ油(オリーブゆ)とは、オリーブの果実から得られる不乾性油のことです。オリーブオイルともいいます。よう素価は75~90。
ツバキ油
ツバキ油(椿油、ツバキあぶら)とは、ヤブツバキの種子から得られる不乾性油のことです。よう素価は73~87。
パーム油
パーム油(パームゆ)とは、アブラヤシの果実から得られる不乾性油のことです。よう素価は43~60。
ヤシ油
ヤシ油(椰子油、ヤシゆ)とは、ココヤシ果実(ココナッツ)の種子の胚乳から得られる不乾性油のことです。ココナッツ油、ココナッツオイルともいいます。よう素価は7~10。
以上の性質を表にまとめると下のようになります。
動植物油類 | よう素価 | 自然発火 | 固化 | 不飽和脂肪酸 |
---|---|---|---|---|
乾性油 | 大 | 発火しやすい | 固化しやすい | 多 |
半乾性油 | ↑ ↓ |
↑ ↓ |
↑ ↓ |
↑ ↓ |
不乾性油 | 小 | 発火しにくい | 固化しにくい | 少 |
共通の性質
それぞれの物品の共通の特徴、火災予防の方法、消火の方法は次のようになります。
特徴
- 引火点が非常に高い。(一般に200℃以上)
- 自然発火する危険性が高い。(雑巾等にしみ込んだものを放置しておくと酸化熱が蓄積してしまうため。)
火災予防の方法
- 蒸気を溜めないように、通風、換気をよくする。
消火の方法
- 泡、二酸化炭素、粉末、ハロゲン化物による窒息消火。
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