図解でわかる危険物取扱者講座

硝酸エステル類

硝酸と硝酸エステル類

硝酸エステル類とは、硝酸(HNO3)の水素原子(H)をアルキル基(-R)で置き換えた化合物の総称のことです。

ニトログリセリンとニトロセルロースは、「ニトロ」の名が付いていますが、ニトロ化合物ではないことに注意してください。

それぞれの物品の特徴、火災予防の方法、消火の方法は次のようになります。

硝酸メチル CH3NO3

  • 硝酸メチルの構造式
  • 硝酸メチル  

爆薬として用いられる物質です。

特徴

  • 無色透明の液体である。
  • 芳香臭がある。
  • 引火性がある。
  • 甘みがある。
  • 水にほとんど溶けない。
  • アルコールに溶ける。
  • ジエチルエーテルに溶ける。
  • 引火性である。(引火点15℃)
  • 分解の際に生じる一酸化窒素触媒となり自然発火する。

火災予防の方法

  • 加熱、衝撃、摩擦を避ける。
  • 容器に密栓して保存する。
  • 直射日光を避ける。

直射日光を避ける!

  • 通風をよくする。

消火の方法

  • 消火困難である。

消火困難

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硝酸エチル C2H5NO3

  • 硝酸エチルの構造式
  • 硝酸エチル 

特徴

  • 無色透明の液体である。
  • 芳香臭がある。
  • 引火性がある。
  • 甘みがある。
  • 水にわずかに溶ける。
  • アルコールに溶ける。
  • ジエチルエーテルに溶ける。
  • 分解の際に生じる一酸化窒素触媒となり自然発火する。

火災予防の方法

  • 加熱、衝撃、摩擦を避ける。
  • 容器に密栓して保存する。
  • 直射日光を避ける。

直射日光を避ける!

  • 通風をよくする。

消火の方法

  • 消火困難である。

消火困難

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ニトログリセリン C3H5(ONO2)3

  • ニトログリセリンの構造式
  • ニトログリセリン 

ダイナマイトの原料として使用される物品です。医薬分野では狭心症の薬として用いられます。グリセリン硝酸でエステル化させて生成します。

特徴

  • 無色油状液体である。
  • 甘みがある。
  • 有毒である。
  • 水にはほとんど溶けない。
  • 有機溶剤に溶ける。
  • 8℃凍結し、液体のときより爆発力が大きくなる。

ニトログリセリンは、8℃で凍結し、爆発力が大きくなります。

  • 水酸化ナトリウムのアルコール溶液で分解すると、非爆発性になる。

火災予防の方法

  • 加熱、衝撃、摩擦を避ける。
  • 床等にこぼした場合は、水酸化ナトリウムのアルコール溶液を注ぎ、布で拭き取る。(水酸化ナトリウムのアルコール溶液で分解すると、非爆発性になる。)

消火の方法

  • 消火困難である。

消火困難

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ニトロセルロース(硝化綿、硝酸繊維素)

ニトロセルロースは、セルロース硝酸硫酸の混合液に浸して作ります。

硝化度(窒素含有量)が多いほど、爆発の危険性が高まります。硝化度によって、次のように分類されます。

硝化度 分類
12.8%を超えるもの 強硝化綿(強綿薬)
12.8%未満のもの 弱硝化綿(弱綿薬)
12.5%~12.8%のもの ピロ綿薬

特徴

  • 無味無臭である。
  • 水に溶けない。
  • 弱硝化綿ジエチルエーテルエチルアルコールの2:1の混液に溶ける。(しかし、強硝化綿は溶けない。)
  • 加熱直射日光衝撃により発火することがある。

火災予防の方法

  • 加熱、衝撃、摩擦を避ける。
  • 自然発火を防ぐため、またはアルコール湿潤剤として用いる。

消火の方法

最後に、ニトロセルロースによって作られる危険物についても見てみましょう。

コロジオン

弱硝化綿ジエチルエーテルとアルコールに溶かしたもの

セルロイド

ニトロセルロースに樟のう(しょうのう)を混ぜて作られたもの。古いものほど発火点が低く自然発火の危険性が高くなる。